管球アンプのもう一つの雄、マランツ#7 プリアンプをご紹介します。
これも2007年ごろの姿です。
こちらも端正な顔をしています。
シルバーのヘアラインがきれいです。
オリジナルのNo.12000番台です。正真正銘のヴィンテージです。
友人からの提供です。
パワーアンプは手持ちの300Bシングルです。
当時のブログから感想を抜粋してみました。
マッキンのオシャレな美しさとは違い、とても上品で気品が漂ようアンプです。
もともと民生用に作られたものですから、セレクターを見るとMICだとかTVといったポジションがあるのも興味深いものです。
当時のアメリカの中流以上の家庭では、レコードばかりでなく#7にテレビの音声をつないだり、マイクを使ったりしたのでしょう。
大家族の暖かい雰囲気の中で小劇場的な使い方を楽しんだのでしょうか。
勝手に想像が膨らむのもマランツならではですね。
#7は1960年当時、249ドル(1ドル=360円で89,640円)でした。
国内では100万円で小さな一軒家が買えた時代の9万円ですから、日本では限られた人しか購入できなかったでしょう。
早速聴いてみました。
曲は、ビルエヴァンス・トリオ「ポートレート・イン・ジャズ」、ブレンデル「ピアノ五重奏曲」などです。
第一印象は「明るい音」と思いました。
ジャズを聴くと、タンノイ・チェビオットがJBLのように鳴り始めたのが印象的でした。
でも全く刺激的ではなく、聴き進むうちに自然な円やかさと上品さがにじみ出てきます。マッキンとは明らかに違う音です。
さらに翌日、ビル・エヴァンス「ワルツ・フォー・デビー」とアメリンク「ザ・ベスト・オブ・アメリカ」を聴きました。
ジャズを聴いたときにシンバルの響きがとても細かく聞こえ、JBLのようだと思ったのは、アメリンクを聴いて音の粒だちがとても滑らかで、きめ細かいための誤解と分かりました。
特にきめの細かさは素晴らしく、音のピントがきちんとあっています。
音量を絞っても歌詞がぼけずにちゃんと聞こえるのです。
繊細というのとも違い、線は細くならず、中低音も太くはないけれどしっかりしています。
このあたりがマランツならではの絶妙さなのでしょう。
マッキンC22のコクやまろやかさとは違った傾向の音色です。
音場の広がりや力強さはそれほどではないように思います。
音のきめの細かさや滑らかさは本来真空管の特徴なのですが、#7の音はなかでも特に素晴らしいと思いました。
なんと、右端のスライドスイッチが電源スイッチです。
このアンバランス感は何なのでしょう。
フォノイコライザーやフリケンシー・フィルターが並んでいます。特に触る必要性は感じられませんでした。
6本の真空管が並んでいます。シールドケースに入った双三極管12AX7が6本です。
入力端子の数々。左端はパワーアンプへの出力です。
さらに翌日は、バックハウス「K331トルコ行進曲」、ブレンデル「ピアノソナタ第21・ワルトシュタイン」、岩崎宏美「すみれ色の涙から」、サリナ・ジョーンズ「アイ・ウォント・トゥ・ノウ・アバウト・ユー」を聴きました。
最初に聴いたときは、高域のシャーンというところばかりが印象的だったのですが、耳エイジングが進んだ結果、音の解像度が素晴らしくよくて音場がぱっと広がるのが分かるようになりました。
歯切れもとてもよく、楽器や声の細かなニュアンスがよく分かります。
それでいて押しつけがましさやうるささがなくピアノの音色などとても良い響きをしています。
これでもう少し低音が延びていればと思いますが、これは好みの問題でしょうね。
これまではコクとまろやかさが一番と思っていました。でも、マランツ#7を聴いて考えが変わりました。こういう音もとてもいいと思います。
マランツかマッキンかとなると、さすがに両雄の貫禄です。
入手できるものなら両方ともとしか言いようがありません。味気なさは慣れますが、ピントのあった音は尾を引きそうです。
マッキンC22とマランツ#7を2台並べてその日の気分によってどちらかを選択する。こういう贅沢をできる方は幸せですね。
マランツ#7とマッキントッシュC22のことはanalog誌の2007年18号と2008年19号に書かれています。
初期の12000番代だとクラロスタットの2連ボリュームがついているらしいです。(17000番代の後半以降は日本コスモス製のボリューム)
初期のボリュームの機種は中域の厚みがあるとのことですが、当時の記憶では、マッキンほどの厚みは感じられませんでした。むしろフラットな印象でした。
記事はマランツとマッキンのボリュームのことに詳しく触れていて、両者の音の違いはマランツのクラロまたはコスモス、マッキンのCTSの違いだと言い切っているのが面白い。