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ビル・エヴァンス TRIO ’64

ビル・エヴァンス

「TRIO ’64」は、1963年12月18日に録音されたものです。

1961年7月に優れたベーシストだったスコット・ラファロを交通事故で亡くし、悲嘆に暮れていたビル・エヴァンスがようやく動き出すまで半年かかりました。

1962年からは、ギタリストであるジム・ホールとのデュオで「アンダーカレント」を録音したり、新しいベーシスト、チャック・イスラエルとポール・モチアンとのトリオで録音したりしたほか、クインテットやソロで演奏していました。

1963年に3人目のベーシストであるゲイリー・ピーコックを迎え、ポール・モチアンとのトリオで録音されたのがこの「TRIO ’64」です。ゲイリー・ピーコックとの録音はこの1回限りでした。

ピアノ:ビル・エヴァンス

ベース:ゲイリー・ピーコック

ドラムス:ポール・モチアン

ビル・エヴァンスにとっては、迷走期とも混迷期とも言えるこの時期の演奏です。即興演奏家として、これまでの名曲を新たに変えていくことに力を注ぎました。

ゲイリー・ピーコックのこと

ゲイリー・ピーコックは、もともとピアノとドラムスの奏者でしたが、当時組んでいたグループからベース奏者が抜けたため、独学でベースを習得した努力家です。

このアルバムの頃は、ビル・エヴァンストリオとして、お互いのことが分かりトリオのスタイルが生まれ始めたころの演奏です。

エヴァンスとポール・モチアンは息のあった演奏をしています。

ゲイリー・ピーコックのベースの演奏は見事です。最初は少し違和感がありましたが、聴き込んでいくと、ビル・エヴァンス・トリオとして素晴らしい演奏をしていると思います。

ポール・モチアンとの演奏もこの録音が最後になっています。エヴァンスの優しいピアノ演奏を聴いていると、否応なく過ぎていく時間を感じさせられます。

ビル・エヴァンス TRIO ’64

曲目はLPレコードもCDも同じです。

A面
1.リトル・ルル(3:40)
2.ア・スリーピング・ビー(4:39)
3.オールウェイズ(4:00)
4.サンタが街にやってくる(4:22)

B面
1.また会いましょう(3:52)
2.神に誓って(4:22)
3.ダンシング・イン・ザ・ダーク(4:35)
4.エヴリシング・ハプンズ・トゥー・ミー(4:35)

TRIO 64

裏面

TRIO 64

1.リトル・ルル
可愛い感じの曲です。連載漫画と同名のテーマ曲。途中でゲイリー・ピーコックのベースの即興が入ります。ちょっとまだ曲調に合わない感じが興味深い。

2.ア・スリーピング・ビー
ミュージカル「我が家は花盛り」から誕生。明るい曲調に演奏している。中盤にベースの即興が入りピアノが抜けるが、まだ違和感が残る。

3.オールウェイズ
リズミカルな曲。終盤にベースの即興が入りピアノが抜ける。なんとなく調和が取れてきた感じ。

4.サンタが街にやってくる
華やいだ感じのリズミカルな曲調。中盤からベースの即興が入りピアノが抜ける。だが調和を壊すことのないベースに安心感がある。

5.また会いましょう
明るいリズミカルな曲。中盤からベースの即興が入りピアノが抜ける。ゲイリー・ピーコックに自由にさせている感じが聴き取れる。ラファロがいたころの演奏に近い感じがする。

6.神に誓って
ゆったりとしたジャズクラブのような感じ。ピアノの即興が心地よい。

7.ダンシング・イン・ザ・ダーク
リズミカルで心地よい曲。ピアノの即興をドラムスがきれいにフォローしている感じ。ベースは心地よくリスムを刻んでいるところから即興に入るが、違和感なく安心して聴ける。

8.エヴリシング・ハプンズ・トゥー・ミー
静かに始まるゆっくりした曲。3人のバランスが取れたいい演奏です。

ゲイリー・ピーコックは、スコットラファロとは違う手法を意識的に取り入れ、くつろいだ雰囲気はできるだけなくし、動き続けるような演奏をおこなっていたそうです。

ビル・エヴァンス・トリオは、スコット・ラファロの存在が大きすぎてつい比べてしまうのですが、やはり前に進まないといけないのですよね。

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